茶審査技術競技大会、全国優勝、静岡県優勝の二人が語る
一言藤夫(丸藤商店) × 小野慎太郎(小野製茶)
全国茶審査技術競技大会優勝、静岡県茶審査競技大会優勝という輝かしい経験をお持ちであり、日々茶業に携わっておられるお二方であればこその普段はなかなかお伺いすることのできない率直なお話から、今回のプロジェクト(藤枝茶業イノベーション協議会)に力をさいていらっしゃる想いまで、伺うことができました。 まずは冒頭、全国茶審査技術大会に関して、その内容、難しさなど順にお伺いしていきました。
全国茶審査技術大会というのはどういう技術を競われるのですか?
一言藤夫氏(以下一言):
全国茶審査技術の審査というのは4つあり、まず茶葉をお湯で浸出した状態をみての品種鑑別、次に荒茶の外観による生産茶の時期の判別、三番目に仕上げ茶の状態での外観からの生産地判定、最後に5種5煎を口に含み4回生産地をあてるという形で、最後の煎出液服用では、一口含んでの即答が求められ、後からほかのものを飲んで比較した上で解答することはできないというものです。
どんな風に識別されるのでしょうか。
小野慎太郎氏(以下小野):
ひとそれぞれですね。葉っぱの形や色であったり触った感触であったり、味覚が強い方もいらっしゃいますし。自分の場合は、圧倒的に“香り”なんですけれど。でもそれも年とともに嗅覚だけでは不安で口に含んだ味でも確かめるようにはなりました。
全国茶審査技術大会というと、当たり前ですけれど県選抜ということになるわけで、静岡の代表になるだけで大変そうなので、茶審査技術段位というのも取得しやすい、しにくいという地域格差がありそうですね。
一言:
それはもちろんそうですね。一応その点を踏まえて、静岡県には、静岡県(静岡市以外)とし出場枠が設けられていますが入るというのは、チャンスも少ないですし非常に難しいのです。 茶審査技術段位の昇段というのも、自ずと全国大会への出場が果たせてこそ、となりますよね。
静岡県優勝、全国優勝という、茶葉の見極めについて、抜群の鑑定技術をお持ちのお二人だからこその買い付け、市場やブランドに左右されないお茶選びをされているのではないでしょうか。
小野:
私が、かねてから疑問に思っているのは茶市場における取引開始値をはじめ、お茶の取引全般として、おいしさや、出来不出来ではなく、「ここのお茶だからいくらから」と、お茶の値段が決められているのを目の当たりにすると、自分は違和感があります。
一言:
う~ん。誰しもそれはあると思います。ある茶葉と茶葉を比べて、これは倍の値段は違わないだろうと思うこともあるのだけれども、そこには総合的な価値が一方でもちろんありますね。もちろん、それぞれ最終的に自分が価値付けしていくことなのだけれど、それでも伝統的な価値付けというのは買い付けに影響します。一流ブランドの名で、お茶やさんが買ってくれる、自分としてはこの茶葉でこの値段は高いんじゃないかと思っても、それを望むお客さんがいれば、もちろん提供せざるを得ないところがあります。そうすると市場では、そのブランドがどうしても高め、高めと値段がつりあがってしまうところはあります。
小野:
自分は、お客さんのところへ、毎年同じものは持っていきません。その年のいいものをお客さんに提供したいなぁと思っていますので。お客さんにも「今年もいいものをもってきてくれた」と、喜んでもらっています。
一言:
それはほんとにお客さんによりますね。
メディアなどで茶審査技術何段だとか、全国優勝だとか、華々しく標榜されている方々もいらっしゃるなか、お二人は不思議なくらい表に出されていない気がするのですが、そこにはポリシー、こだわりがおありになるのでしょうか。
一言:
全国優勝っていっても、それは問屋さんや小売店さんには通用しないところがあると思っていて、だからそれよりもお客さんに喜ばれるお茶を提供したいというスタンスです。
小野:
例えば普通スイーツ店であれば「世界一のパティシエが作りました…」などと商品を出したら、お客さんに喜ばれますよね。でもお茶屋の場合、それよりもうちはうちのスタイルだから…というところは確かにあるかもしれないですね。
一言:
私にとってお茶屋の店主さんの好み・基準がまず第一です。 もちろん品評会の農林水産大臣賞はアピールした方がよいと思いますが、自分自身が取った農林水産大臣賞(全国茶審査技術大会優勝)は出してきませんでした。お茶の商習慣を表して「あるとき払いの催促なし」っていくらいで、そういう世界では支払いもそうだけれど、仕入れについても、卸先の店主の意向が一番、というところがあります。言わなくても知っている人は、人つてに知っていらして、「優勝したことあるんだってね」とか、そんな風に言われることがあったりしてもね。まぁ、「あるとき払いの催促なし」という前者の商習慣については、今の近代的経営者さんはそんなことはなくて、割合きちきちと毎月支払いがされますけれどね。
小野:
私達は小売店を相手に商売してきたので、茶審査技術が何段とか、正直関係ないっていうのはあります。もっというとお茶の世界は商売にも歴史があるから、何かを積極的にプロモーションするっていうことは“品がない”だとか、そういう風に全体的に思う傾向というのもあり、自分も段位とかをこれまで表に出していませんでした。

そんな伝統的であり保守的な業界にあって、それでも、新しいことにチャレンジしよう、業界ではなく消費者が喜ぶお茶づくりをと考えられるお二人の原動力は何ですか。
小野:
今後10年見据えたときに、これまでの10年をみてきてどうだったか、というのはありますよね。率直に自分の子どもを食わしていかなきゃ、っていうのももちろんありますし、業界として市場が縮小しているからといっても、そのなかで自分の市場は広げていかないと、と思っています。
一言:
それはね、ほんと「売れなくなってきた」っていうことが如実にあって、圧倒的な危機感はありますね。 いま危機感の差が行動の差になっているんじゃないかなあ。もちろんね、これまで充分商売をしてきて、後は老後を好きなようにお茶に関わっていければ、とかいう人もいらして、それはそれで素敵ですよね。
伝統的な業界においても流通形態も目まぐるしく変わり、生産者から小売、あるいは直接消費者へと物が届く時代でもあります。これからの茶匠さんの仕事って変わっていくと思われますか。
一言:
競争は厳しいですね。そんな状況にあって、今回の試みもその一つですが、生産農家の方々と一緒に、消費者の方々が望まれるお茶づくりを丹念にしていくということが大事だと思っています。
小野:
自分にしかできないことをしていかないと、というのはすごくあります。
一言:
そうですね、それはもう。ただね、流通の再編は昨日や今日始まったことではなくて、もうここずっと変遷し続けているというか。 お茶は、昔は茶農家が手揉みでお茶を作り、問屋が集めて仕上げして、消費地の問屋さんに買ってもらい、そして消費地の問屋さんから小売店へ、小売店から消費者の方々へと届いていたわけですけれどまず、消費地の問屋さんを飛び越えて小売屋さんにお茶が流れていくようになり、そのうち精揉機屋さん(荒茶工場を専門に営む)が大きく成長し、小売店に直接販売しだしたよね。旧来の産地問屋を飛ばすというか、肩代わりするようになったというか。
通販で直接消費者に販売するようにもなったしね。旧来の産地問屋はますますシェアーを食われてるという構図は間違いないでしょう。
小野:
そういう状況であるから、ただ安くいいものを買うということでなくて、自分がいい茶葉を作られているところだな、と思ったら、それだけの価値を相手にも返していくようなことも、自分ができることの一つだと思っています。
一言:
あとは、品質管理についてお客様に信頼してもらえるようなお茶を、ということですよね。
厳しい時代だからこそ、真価が伝わりやすい時代ともいえるのかもしれませんね。最後に今後のお茶との関わりについて抱負、あるいはお茶を愛飲されている方に向け一言ずついただけますでしょうか。
一言:
熱心な農家と、思いをつなげてよりよいお茶づくりを、と思っています。
小野:
自分の手掛けた本物のお茶をお客様に届けたい、です。
ありがとうございました。
特に山間茶園で 採れる香味の濃い上級煎茶を軸に、お茶がふるまわれるシー ンまで想定した日本茶の真のおいしさを追求。藤枝の軒先で は、奥様デザインのアイロンクラフトの趣きのある看板が出 迎えてくれる。
第30回全国茶審査競技大会優勝、茶審査技術6段
小野製 茶は大正8年創業。有機栽培・無農薬緑茶の取り 扱いにも注力、国内JAS規格以上に厳しい欧州基準も満たす 茶葉を扱っている。中東、バンクーバーなどにも茶葉を輸出。
静岡県茶審査技術競技大会優勝、茶審査技術8段。








